タビノキロク
野地秩嘉さんの近著『ヨーロッパ食堂旅行』に、パリの料理店主の回想がある。これがちょっといい。その昔、店で一番安い定食を頼んだ 米国人カップルが、書き置きを残したそうだ。〈新婚旅行の食事のうち、ここのが最高でした〉▼約30年の後、4人家族が高級ステーキを注文し、シャンパン を何本も空けた。勘定でハネムーンの思い出に触れたので、もしやと店主、かねて保存の紙片を見せる。夫婦は涙ぐんだという。店と客の交わり、こうありたい。